一般に体罰は「しつけ」の一環と考えられているが,驚くべきことに「体罰」でも脳が打撃を受けることがわかった。厳格な体罰(頬への平手打ちやベルト,杖などで尻をたたくなどの行為)を長期かつ継続的に受けた人たちの脳では,前頭前野の一部である右前頭前野内側部の容積が平均19.1パーセントも小さくなっていた(Tomoda et al,, 2009)。この領域は前頭前野の一部で,感情や思考をコントロールし,犯罪抑制力に関わっているところである。さらに集中力・意思決定・共感などに関わる右前帯状回も,16.9パーセントの容積減少がみられた。物事を認知する働きをもつ左前頭前野背外側部も14.5パーセント減少していた。